★【徹底解説!!】地上権と地役権、賃借権は何が違う?
不動産投資を行っているとよく「地上権」や「地役権」が設定された物件に出会うことがあります。
非常に似たネーミングの「地上権」と「地役権」という二つの権利ですが、実はその内容は全くの別物です。また地上権とよく間違う権利に「賃借権」があります。これらを混同してしまうと不動産取引において『思わぬ不利益を被る可能性』があります。
そこで今回は地上権と地役権を賃借権との違いも含めて徹底解説をしていきます!!
1.(共通事項)
地上権も地役権も「他人の土地を利用することが出来るようになる権利」であるということです。
「他人の土地を利用する権利」と聞くと、真っ先に頭に浮かぶのが『賃借権』という言葉かと思いますが、実際の利用形態はそれ程変わらないものの、「賃借権」と「地上権・地役権」は法律的な扱いが大きく異なります。
そして両者間の最大の違いとされるのが、賃借権が「債権」のいう権利形態に属するのに対して、地上権や地役権は「物権」という権利形態に分類される点です。
まず『債権』ですが、これはあくまで「貸した物に対して対価を請求する権利」です。(部屋を貸せば家賃、お金を貸せば利息)
これに対して『物権』は権利が設定された対象に「直接的な支配が可能となる権利」であり、対価も不要、その威力も債権とは比較にならない程に強いものとなります。(所有権も物権の一種)
もちろん「地上権」や「地役権」には、所有権ほどの『自由さ』は許されていませんが、限られた範囲においては所有権にも匹敵する威力を秘めている強力な権利とご理解下さい。
但し、いくら強い権利とは言っても「本人が間違いなくその権利を持っていることを証明」することが出来なければ意味がありませんので、この権利を行使できる条件として、対象の土地に「地上権」「地役権」といった登記が必要となるのです。
2.地上権
(権利の概要)
地上権は「他人の土地に建物を建てる際に設定される権利」となります。
これが土地の賃貸借であれば、契約の更新や、借地権の譲渡に当たっての地主の承諾や承諾料が必要となりますが、地上権の場合はこうした承諾等が一切必要ありません。
この違いは実際の不動産取引においてはかなり大きな意味を持ちます。例えば賃貸借の場合、あなたが建物部分を譲渡しようとした場合、地主の承諾が必要となりますが、この際、地主が嫌がらせで譲渡を認めなかったり、高額の譲渡承諾料を請求してくる事があります。
※実際筆者の経験では建物部分をある大手外資系企業に売却しようとした際に”外国人には土地は貸さん! "と地主に言われ、あわや訴訟になりかけたこともあります。。(この際、借主は非訟行為という手続きを取れば地主の承諾なく建物部分を譲渡できるのですが、仮に譲渡できたとしてもその後の関係に支障をきたすので、最終手段とした方が良いです。非訟行為については後日解説します。)
「地上権は借地権のパワーアップ版」と理解して頂くのが、最も分かりやすいかと思います。
地上権と賃借権を法的側面から簡単にまとめました。
地上権 | 賃借権 | |
権利の性質 | 物権 | 債権 |
譲渡・転貸について | 〇 (土地の所有者の承諾がなくても譲渡・転貸できる) | × (土地の所有者の承諾がないと譲渡・転貸できない) |
第三者対抗要件 | 〇登記(土地の所有者は、地上権者のために登記をする義務が生じる) | △登記(建物についての登記を自分で行う必要がある) |
抵当権を設定できるか | 〇できる | ×できない |
(実例)
建物を建築する以外で地上権で最もよく使われる実例としては地下鉄の線路敷設があります。地上では地主が普通に生活していますが、土地の地下部分には地上権を設定し、地主の承諾を必要なく、電車を走らせ、工事を行うことが出来ます。
3.地役権
地役権とは、「他人の土地の便益を確保するために定められる権利」のことです。例えば、ある土地Aが道路に接しておらず、隣の土地Bを通らないと道路に出られないとします。この時、土地Aのために土地Bに設定される権利が、地役権です。(このようなケースの地役権を俗に「囲繞地(いにょうち)通行権」)
地役権を設けることで、土地Aの所有者は道路に出るために土地Bを通ることができるようになります。地役権は、特に建物を建てたり竹木を植えたりという目的はなく設定されます。
(実例)
地役権は通行以外でも
・畑や田んぼに用水路を引き込む経路の確保
・電力会社が他人の敷地の上に電線を通過させる(「空中権」ともいいます。)
等身近なところで地役権は利用されています。
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